2011年1月6日

南直哉氏の「老師と少年」読了。

多くの頁が結果的には割りあてられている、主たるテーマ、それは、こんなつたない言葉を充てて表現してしまっていいのか迷うが、「自我の暴走を強制終了させる」というテーマで、自分的には、これにはそれほど共感せず、良い悪いではなく、あまり今は面白い話ではなかった。

少数者に向けたメッセージなのだよ、と感じさせて多くの人を惹きこむ、という話法技術が少し内包されているともいえる。この小説の中の世界の背景は、格差がはげしく、富める者はほんの少数者で、乳児死亡率が高い世界なのだろうか?現代の、相対的にGDPは低くなく出生率が低くなっている国とは、書かれていない前提が食い違っているにおいもする。禅問答なのだが、ドナルド・ウッド・ウィニコット氏の「移行対象」理論などの本のことを思い出した。
そう、なんといっても、みうらじゅん氏が巻末で書いているように、師弟関係という設定がよかった。この老師は、しぐさはやさしいが、ベタついたやさしさはない。師弟関係というしくみなどの、「軽い強引さ」は知恵なのだ、と感じさせられる。

初出2009年12月11日(金)